民営化万歳論への警鐘

民営化という虚妄―「国営=悪」の感情論が国を滅ぼす

民営化という虚妄―「国営=悪」の感情論が国を滅ぼす

私たちはとかく「官=サービスが悪い、民=サービスが良い」というイメージにとらわれ、公営企業の民営化というと何となく良いことのような気がしてしまいますが、本書は、そうした流れに対して具体的根拠をあげながら警告しています。


具体的には、今が旬の郵政民営化問題を事例に論じつつ、国鉄、電電、諸外国の民営化の事例も幅広く検証されています。はじめに「民営化=悪」の前提ありきでの論立てではなく、民営化といってもさまざまな形態があること、それらが社会的にどのような影響をもたらすかなど多面的に解説してあるので、説得力があります。


私自身、父親が国鉄職員であったので国鉄のJR化の実態を裏側からも見てきたし、郵政民営化問題も直接関係している問題なので、興味深く読むことができました。


先日のJR西日本列車事故など、効率優先の社会の矛盾が現れているいま、さらに自由競争至上主義を推し進める「構造改革」が私たちの利益になるのか、立ち止まって考察する上での材料を提供してくれる本だと思います。