「狙い」はどうあれ当店は我が道をいくだけ

大日本印刷グループと、講談社小学館集英社の大手出版3社は13日、中古本販売大手のブックオフコーポレーションの株式計約31%(議決権ベース)を取得すると発表した。筆頭株主日本政策投資銀行系のファンドなどから買い取る。出版不況の中で、敵対していた出版社・新刊書店と新古書店が提携することになった。

 大日本印刷グループが議決権の17・89%を持ち、筆頭株主になる。講談社小学館集英社はそれぞれ4・66%を買い取る。ブックオフの販売網を活用し、出版不況の克服策を検討するとみられる。

 有力書店を傘下に置く大日本印刷は「中古本を含む出版業界全体の協力・共存関係を構築し、持続的な成長を実現させていくため」(広報室)と説明。近く出版3社、ブックオフと協議を始めるという。

 全国にチェーン店を展開し、廉価な中古本を売りさばくブックオフはインターネットによる販売も拡大。こうした商法が新刊本の販売不振につながっているとの見方もある。このため、株式取得は「中古本市場をコントロールする狙いもあるのでは」(業界関係者)と懸念する声も出ている。

 大手出版3社と大日本印刷グループによる中古本チェーンのブックオフコーポレーションの株式取得は、出版不況の中で二次流通市場に活路を見いだす狙いがあるとみられている。だが、客が読み終えた新刊本を買い取り、即座に割安価格で店頭に並べるブックオフの販売スタイルとは利害が対立。市場への“介入”ともうけとれ、中古本市場への影響が出そうだ。


新刊本の販売が低迷する一因として、出版各社が一様に指摘するのが「巨大な二次流通市場をもつブックオフの影響力」(集英社)。全国に約1000店を展開するブックオフでは、新刊本も発売から数日後には割安価格で店頭に並んでいるのが実態だ。

 講談社の広報担当者は「新刊書籍が日にちをおかずに安い価格で流通している現状に問題がないわけではない。是正していかなければ」とルール作りの必要性を強調。小学館の広報担当者も「秩序のあるルールを模索し、流通環境を整備したうえで多くの読者に読んでもらいたい」と、価格問題対策に乗り出す意向を示している。

 ただ、公正取引委員会の松山隆英事務総長は13日の定例会見で、今回の株取得について「出版業は再販価格の維持行為ができるが、中古図書の価格を指示することは認められていない」と述べており、出版社側の思惑通りに進むかは微妙だ。

 ブックオフは「提携後の業務については現段階では何も決まっていない」(コーポレートコミュニケーション室)としているが、現在の販売スタイルの見直しを迫られる可能性もある。

 大手出版社が中古本販売に関与することに、古書店業界や利用者の間では警戒感も広がっている。

 東京都内のある古書店主は、「出版社は、古本としてでも在庫を安く売りさばきたいのだろうが、そんな売り方をされると新刊書はさらに売れなくなる」と批判。ブックオフの利用者からは「新刊本の買い取り価格が下がり、販売価格が上がるのでは」と影響を心配する声も聞かれる。


東京都古書籍商業協同組合の小沼良成理事長は「ブックオフは10年以内の比較的新しい古本を扱っている。昔ながらの古書店としては、30年前、それより前の本も取りそろえて専門化を進め、より差別化を図っていきたい」と生き残りを模索している。

 ノンフィクション作家、佐野眞一さんの話「再販制度の抜け穴を利用して急成長したブックオフ再販制度に守られてきた大手出版社−。両者は険悪な関係にあったはずで、出版社がブックオフを取り込む本当の狙いは今の段階ではまったくわからない。出版社が抱える在庫を処分するため、という見方もあるが、それは自分の首を絞めるだけだと思う」

業界では衝撃的ニュースということで、いろいろな見方がでていますね。
現役書店員のブログ「本屋のほんね」では、なかなか興味深い考察がなされています。

2009-05-13 DNPと出版大手三社がブックオフ株を取得!?

これを読むと、古書業界よりも、むしろ新刊書店業界のほうが、影響を受けそうな気もしてきます。


このニュースは確かに本周辺の仕事をしているものとしては、よくよく考えておくべき問題なのだとは思いますが、私としてはどう見たらよいかまだよく分からないというのとともに、あまり自分自身の問題としてとらえる気もないというのが正直なところです。せどりマケプレ売り界隈では、いままでもブックオフオンラインの参入の時や、ブックオフ株価の急激下落の時などに、せどりに悪影響があるのではという心配も聞かれましたが、実際は致命的な
影響はありませんでした。大局的な業界の流れがどうなるのかは、今後も自分なりに考えていく必要があるとは思っています。ただ、評論家的に情勢を眺めたあげく、右往左往するのでは意味がありません。やはり大切なのは、どういう状況になろうとも、かぴぱら堂が古本を売って利益を上げ続けることができるようなしくみにできるよう、試行錯誤していくことで、そのための参考程度にこうした情勢も頭の中に入れておくというのがいまの気持ちです。記事のなかでは、東京組合の小沼理事長のコメントが、私の思うところに近いですね。