まだ私達は需要を掘り起こしきれていない

雑感(エーブック日記5月10日)

古書の市場だけでなく、どんな市場でも、ある程度の参加者数がいないと成立しませんし、ある程度の売上がないと維持できません。
そして常に売上の向上を目指していかない限り、衰退あるのみです。
しかしながらパイが限られているのは間違いありません。
小さなパイを沢山の人数の中からお腹いっぱい食おうとすれば当然、軋轢が起こります。
現状はよく知りませんが、ブックオフの105円の棚はまさにそうなんじゃないでしょうか。
でも実感として、意外と私達のパイは私達だけではとても食べきれないぐらいにでかいんじゃないかと言うことを感じています。

私達が大きな買取をすると「よくそんな仕事取ってきてすごいねえ」と言われたりもするのですが、全然そんなことはありません。激烈な競争を勝ち抜いて奪い取ったというのはなく、誰も引き受け手がいない仕事がたまたま回ってきたので受けたらこれが大当たりだったという感じです。三つ具体例をあげます。
一つ目、法律書経済書6000冊買取の仕事は、依頼者の方が数十軒の古本屋に打診をしたものの、その大量さゆえに引き取り手がなく、当時検索しても数十番目だった当店サイトを探し出してのご依頼でした。二つ目、新しめビジネス経営書5000冊買取は、引取先がご自宅と貸倉庫(といってもレンタルコンテナみたいなのではなく、臨海地帯にある大手倉庫会社)に分散し、倉庫へ直接引取できることが条件だったのですが、これに対応できたのがうちだけでした。三つ目、歴史趣味関係2500冊のお客様も、やはり大量のため複数の古本屋には断られ困っていたところ、たまたま行出かけたデパートの古本市で出店していたある古本屋さんに相談、しかしその業者も自分の仕事で手一杯だったため、うちに仕事をまわしていただいたという経過でした。この3つのケース、どれも7桁の売上をつくっています。同業者に聞いても、大きな仕事は合い見積もりを取られることはあまりなく、単独指名で入ってくるようです。


買取サイトがひしめいている昨今、サイトを開いたけれども依頼が集まらないという話はよく聞きますし、その中で仕事をたくさん受けている業者は一部分ですから、全体的な傾向でいったら競争が激しくなっていることは否定しません。とりわけ1点ずつネット相場連動で査定します系のところはそうでしょう。価格競争になるところでは激烈な競争、相場データさえ取得できれば誰でもできるのですから当然です。誰でもできない何かがひとつふたつ(それは意外にハードル低い)あるだけで、そこから抜け出せるのにとつくづく思います。


あと忘れてはならないのが、これだけネット上で高価買取情報が氾濫し、自分でネット販売する手法が普及してきたにもかかわらず、決して高価買取していると思われていないブックオフに、いまだに日々大量の買取が集まるのは、手間をかけて高く換金するよりも、安くてもいいから手っ取り早く換金して片付けたいというニーズのほうが大きいということを示しているのではないでしょうか。これから良い買取を集めるには、買取価格よりも手間をかけたくないというお客様をメインターゲットにし、その中からブックオフでは満たされないニーズをどれだけこちらが拾い上げられるかにかかっていると思います。