得意分野が被る同業者

即売会でご一緒している先輩同業者、この方は鉄道が得意分野のひとつ。私も鉄道は即売会では力をいれているし、何より趣味が同じということで時折鉄ネタの会話をするのですが、彼曰く、その即売会で鉄道書を売り始めた頃はなかなか売れなかったが、それでもめげずに続けていくうちに、うちを含め鉄道書を置く店もいくつか出てきて、だんだん売れるようになってきたとのこと。
普通考えれば、得意分野は独占できているに越したことはないとなりがちですが、古本の場合は同分野の店が複数あっても、全く同じ品揃えというのはありえないし、傾向も店主のカラーが出るので、あの即売会に行けば良い鉄道書が出ているだろうという期待をお客様に抱かせ、結果的に足を運んで買っていただけるようになったということでしょう。
同業者、とくに分野が被る場合は、おいしい仕入れの種明かしは御法度と思われるでしょうが、実際は意外にもどんなところから仕入れたとか喋ってしまうものです。ネタバレしたところで、仕入れ先は個人買取かどこかの市場に出たとかいう内容で、一期一会ですから、あとからそこに行ったからといってその仕入れが再現できるわけではない。それよりか上手くいった話を他人に話したい欲求が上回るのです。
買取はともかく、市場で鉄道のおいしい口が出たら、その同業者がいる限り、安くは買えません。東京では鉄道得意な同業者が少なくないのでなおさらです。それでもそうした体験談を聞いておくと、たまたま依頼があった買取とか、地方の市場でその分野のライバルがいなかったとき、役に立つのです。そして一歩すすめば、ライバルがいても間隙を縫って仕入れる技が身についたり、隠れた好機に出くわしたりすることもあります。ですから得意分野が被る同業者だからこそ、持ちネタを暴露しあったほうが良い結果を生むというのが私の考えです。