ブックオフ決算資料を読む

2013年3月期 第3四半期決算短信(PDFファイル)
2013年3月期 第3四半期決算補足資料(PDFファイル)

ブックオフコーポレーションの2013年3月期第三四半期(2012年4月〜12月)連結業績によると、2012年の同時期と比較して、売上高はわずかに増えているものの、営業利益、経常利益、純利益が40〜50%減少しています。補足資料をみると、セールやサービス券乱発を抑制した結果、想定以上の客数減少を引き起こした(上半期で前年度比92%)とのこと。売上高は既存店では減少し、新規出店とブックオフオンラインの伸びでカバーしての微増。客寄せの方法をセールやサービス券からキャンペーンやテレビCMに移行したことにより、粗利益率は上昇したものの、広告費が増加し、利益額を伸ばすには至らなかったようです。
2012年は、新刊の書籍雑誌売上も前年度比3.6%減(出版科学研究所による推定値)ですので、当然新刊書店全体の売上も減少し、加えてセールとサービス券の抑制というブックオフ独自の事情をも乗り越えてのこの結果ですから、これだけの悪条件下、よく持ちこたえたともいえます。


補足資料によると、ブックオフは年末年始の買取販売キャンペーンを次のように総括しています。
(1)セールを抑制してきたこともあり、CPNは客数回復に大きく寄与した。
またCPN期間の前後で客数はベースアップ、特に仕入客数は100%に回復。
(2)TVCMにより幅広くリーチ、長期離反客の来店動機にもつながった。
(3)仕入客数の回復が先行し、「仕入→販売」のシナリオ通りの結果になった。
また仕入客数は販売キャンペーン期間においても高い水準を維持しており、
仕入→販売」だけでなく「販売→仕入」と相乗効果があることが分かった。
(4)CPNによる一連の客数回復ストーリーは間違ってはいなかったが、
単発での水準訂正とはいかなかった。
(5)今期の成果と反省を踏まえ、来期は「商品力」「価格」「商材」「プロモーション」などあらゆる面において「BOOKOFF」の集客シナリオの抜本的な見直しを図る。


セールとサービス券乱発からプロモーション重視の方針転換自体は正しく、成果も見えつつあるが、目指す結果を出すには予想以上に時間がかかるというところでしょうか。

私が注目したのは、「売上客数減が『想定外の仕入客数減』を引き起こし、「仕入減→商品力低下」が想定以上の売上客数減を引き起こした」と指摘。それを踏まえて実施された年末年始のキャンペーンの結果「キャンペーン期間中は仕入・販売ともに期待通りの客数増加となった。前後比較でも客数はベースアップ、特に仕入は100%まで回復」さらに「仕入客数は販売キャンペーン期間においても高い水準を維持しており、『仕入→販売』だけでなく『販売→仕入』と相乗効果があることが分かった」と総括している点です。買ってくれる客が減れば売ってくれる客も減る、つまりブックオフで買い物する客の多くは買取品を持ち込む客でもあるということ。もちろん買う専門、売る専門の客もいるでしょうが、もしそういう客がメインだったとしたら、まず売る客が減って買取が減り、仕入れの質量がさがることで買う客も減るという流れになるはずです。このことは、ブックオフを支えている主要顧客は大勢の一般客であり、せどらーではないということを示しているのではないでしょうか。

せどらーは確かに1人当たりの購入額は大きいでしょうから、店舗単位で今月売上が足らないからちょっと手伝ってもらうかというときには便利な客かもしれません。現に店長クラスと懇意になって、購入に便宜を図ってもらっているせどらーを何人も知っています。以前、秋葉原店などで「タッチでおトクなメンバーズ」会員限定早朝セールが実施されたのは、明らかにせどらーを意識したものでした。しかしそうした施策は長続きせず他店に波及することもなく、多額の宣伝費をかけてキャンペーンをして一般客を集める方針を実施し、不十分ながらも成果が出てきているということからも、せどらーの影響力など大したことはないということがうかがえます。ですから、ブックオフにとってせどらーは、マナー良く大量に買ってくれるのなら上得意客のひとりですが、周囲の一般客に迷惑な振る舞いが目立てば追い出す対象といったところでしょう。