電子書籍とアマゾン送料値下げ

7月21日のコメント欄に、多くのご意見を投稿していただき、ありがとうございました。
私見では、ここ10年〜20年後の近未来においては、電子書籍は一定の普及はするものの、紙の本は依然として書籍形態の主流をなし続けると思います。いまiPadキンドルを購入している層は、都市部のホワイトカラー層が中心なのではと思います。私の知り合い関係では、せどり・古本屋関係では買ったという話も若干聞こえてきますが、地元関係では全く聞こえてきません。現状では電子書籍騒ぎは他人事というのが一般的な受け止めなのではないでしょうか。一説によると、日本におけるiPad販売台数は30〜50万台という推計があり「日本でのiPad初期ロット販売数を論理的に推測してみる」、この売れ行きは凄いとは思いますが、仮に1000万台になったとしても普及率は10パーセントくらいです。電子書籍は日常的に多読する人でないと、コスト的に割に合わないでしょうし、世の中には、本はたまにしか読まない、全然読まないという人も多いです。書籍市場において、そのような人達がたまに買う本の占める割合は、まだまだ無視できないものがあるのではないでしょうか(この辺は根拠とするデータがなく言ってますので、完全に私の独断です)。


問題なのは、書籍市場が縮小傾向である点で、リンク先の記事によると「10年で売上は書籍17.4%減、雑誌は24.4%減」だそうです。電子書籍が書籍市場復活の起爆剤になるかどうかは未知数です。電子書籍が一定の普及をしても、電子書籍を含めた書籍市場が下げ止まらない可能性もあります。ですから、将来の古本売りを展望したときに脅威となるのは、電子書籍の普及よりも、電子書籍をふくめた書籍市場の縮小かもしれません。私はこの点では、書籍市場の縮小はしばらくは続くのではないかと、若干悲観的に見ています。


では古本業界はどうか。ブックオフも品出しすれば売れた時代は終わり、古書組合の市場も出来高が微減傾向のところが多いようです。マケプレも、利用者、販売数の伸び以上に出品者、出品数の伸びはめざましいですね。正確な数字はわからないものの、例えばかぴぱら堂は、2007年頃だったら出品数、30日以内の評価数は100位前後をうろついていました。この頃は個人出品者が上位に来ていたのに、いまではすっかり大量出品業者が幅をきかせています。体感的には、適当に仕入れて適当に売れていった時代は、2008年頃には終わったと感じています。きっとアマゾンも、総出品数に対する総販売数の割合が低下していることを認識し、テコ入れをしようということで、今回の送料値下げになったのではないかと推測します。「この機会にぜひ低単価書籍の出品拡大をご検討ください」とアマゾンからのメールでも書かれていましたね。この時代、やはり安い商品は売れやすいのです。1円本は、かなりの量が売れているのでしょう。1円本を駆逐するのではなく、むしろ需要を喚起して売りやすくする方策とみるべきではないかと思います。


先日、アマゾンで低価格本販売をしている業者さんとお話をする機会がありました。その方は、平均単価が200〜300円くらいで、出品商品に占める1円本割合が4割くらいなので、今回の送料値下げではかなり減収になります。で、今回の送料値下げをどう受け止めているかを聞いてみたら「それによって売れる数が増えれば良いのでは」とおっしゃっていました。また別の大口出品の業者さんの所には、メールが送られる前に、アマゾンから直接電話でお知らせがあったとのことでした。


確かに、せどりで1円本を仕入れて利益を出すのは、困難になりました。しかしながら、多数のだぶついている本がある一方で、品薄の本、需要に供給が追いついていない本(CD、DVD)も依然として存在します。その点では、まだまだせどりの可能性はあると思います。そうはいっても厳しいのではと思われる方は、今のうちにせどりに代わる何かを見つけられたほうが良いと思います。それでもせどりを頑張るぞという方は、今後もいろんな手法を編み出して生き残れるのではないでしょうか。


追記:「アマゾンに対抗する古本販売サイトがあったら、出品者をもっと大切に扱うようになるのでは」という意見が、ことあるごとにたびたび出てきましたが、私はそれは違うのではないかと思うようになりました。もしアマゾンに匹敵するサイトがあったとしたら、とうの昔にマケプレ送料は値下げされていたことでしょう。今日まで340円(手取りは260円ですが)という送料で出品者が送料差益を享受することができたのは、ある意味、アマゾン半独占状態がもたらす既得権益の恩恵を受けていたともいえるのではないでしょうか。


あと、送料値下げによって、1円出品が減るとか出品者がヤフオクに流れるとか、くやっていけなくなって撤退する出品者が増えるかどうかですが、ごく一部にあったとしても大きな流れにはならないと思います。ヤフオクも出品手数料は無料→3%→5%と値上がりしてきましたが、これによって出品者をとりまく状況に大きな変化があったという話は聞きませんから。