仕入れ資金を貯めなければ

日本古書通信」4月号で稲垣書店さんが書いている「今だから話そう----買えなかったものの話 止値一千万円の衣笠貞之助資料」。二度と出ることのない一括資料が市場に出、どうしても欲しかったのに資金を工面できず買えなかったという話。その出品物のその後の行方も大変興味深い結末になっているのですが、それはさておき最も印象に残ったのは以下のくだり。

私はこの一件を通じて、この商売先立つものは金なんだということを、イヤッていうほど思い知らされた。どんなに物を知っていようと好きであろうと、いくらこれを扱うには自分が一番ふさわしいなどと自負していようと、先立つものがなければ手中にできぬ。その意味では一千百万円という数字はトラウマとなって、しばらくの間私の脳中を
さいなみつづけた。

その後蓄財に励んだ結果、同等の出物がでても2回買えるくらいの貯えができたそうですが、皮肉なことに「その金すべてつぎ込んででも手に入れたいと思わせられるような品物は、いまだ現れてきてはいない」そうです。


良い仕入れの話は、いつも突然来ます。買取だったり、市場の出品情報という形だったり。幸い買取ではチャンスを逃したことはないですが、市場仕入れでは当座の資金がなくてあきらめたことは1回や2回ではありません。そのくやしさからか資金を貯めようとは思うのですが、ちょっとあるとすぐ目前の仕入れに使ってしまい、そのくせ商品化が遅いのでキャッシュフローは悪くなり、なかなか思うように余裕資金をつくれません。それの克服が今年の課題でもあります。