虚偽クレームの購入者と全面対決

先日、『学説判例刑法総論 (学説判例シリーズ)』(下村康正著)に注文が入りました。当店販売価格は200円。状態は「良い」で状態コメントは「1986年4刷。カバーに若干のヤケ、汚れがありますが、本文は良品です。書き込みなし。蔵書印あり」。出品はうちの1点だけで、絶版書につき新品はなし。その割りには安い値段ですが、価格改定を重ねるなかでどんどん安くなり、そのうち他の出品者のが売れていって、うちだけが取り残されたのでしょう。
少し「しまった」とも思いましたが、出品したのが2007年12月でなかなか売れなかった本なので、売れてくれただけありがたいと思い直し、購入者を見ると見覚えのある名前が。アマゾンでの購入者ニックネームが「読書が好きです」(仮名)。この方とは過去10回ほど取引をしているのですが、うち半数の取引で、状態コメントに記載していない欠点があったとクレームをつけてきて、その都度、全額返金などで対応してきた購入者です。以前、購入する度クレームをつけてきた別の購入者がいて、3回目に虚偽クレームである確証を取ったので、アマゾンに通知したということがありました。「読書が好きです」(仮名)さんにかんしては、毎回クレームをつけるわけでなく、時には「良い状態の本をありがとうございました」とお礼のメールをしてきたこともあったので、そのクレームが虚偽かどうか判断をつきかねていたのですが、それでも気をつけて注目してきた購入者ではありました。
そこで今回は、念入りにクリーニングと全ページチェックをし、書き込みなど状態コメントに記載していない問題点がないことを確認。さらに外装の写真をあらゆる角度から10枚ほど撮影したのち、発送しました。

数日後、「読書が好きです」(仮名)さんから次のようなメールが届きました。

社長様へ

御社の場合、殆どいつも美品が送られてきて感動するのですが、今回は、ちょっと残念でした。
コンディション「良い」とあり、「カバーに若干のヤケ、汚れがありますが、本文は良品です。」となっていましたが、可也茶色に焼けていましたし、結構彼方此方に線引きや書込みがあり、付箋の貼り込みも散見されました。
線引きや書込みは、赤ボールペンによるものは僅かで、薄い鉛筆によるもが多かったので、たぶん見落されたのだとは思いますが。
何れに致しましても、少々がっかり致しました。

「読書が好きです」(仮名)より

今回の本は、状態コメントにはそう書いたものの、実際にはヤケ、汚れも経年によって自然に付く程度でしかなく、20数年経過した本ということを考慮すれば美品とはいかないまでも、平均的レベルよりは状態が良い本でした。ですから今回はクレームが来ない可能性が高いかなとは思っていました。しかしそのような状態を持ってしてもなお、平気で書き込みや付箋があったと、明らかな虚偽クレームをつけてきたということで、悪質購入者と認定し、対処をすることにしました。まずは下記のような返事を送りました。

「読書が好きです」(仮名)様


ご連絡ありがとうございます。
『学説判例刑法総論』の状態の件ですが、恐れ入りますが、お申し出の内容は何
かのお間違いではないでしょうか。


当方コンディション表記では「カバーに若干のヤケ、汚れがありますが、本文は
良品です」と表記しましたが、実際は経年を考慮してもヤケ、汚れはそれほどな
かったはずです。付箋の貼り込みもないはずです。その上、私と妻が二人ががり
で、念入りに状態チェックし、汚れもできるかぎり落として、最大限綺麗な状態
でお届けいたしました。


また、本文についても全頁念入りにチェックし、書き込みの見落としは確かにあ
りませんでした。なお発送前に、あらゆる角度から10枚ほど写真撮影し、保存し
てあります。


「読書が好きです」(仮名)様とは何回もお取引させていただいていますが、他のお客様と比較して、状態に対するご意見が格段に多いため、当方といたしましても失礼のないようにと思い、最大限の配慮をさせていただき、商品をお届けいたしました。それにもかかわらず、このようなお言葉をいただくとは、大変遺憾でありま
す。


当方は今回の商品状態には絶対の自信を持っております。もしどうしてもご不満
がある場合は、アマゾンマーケットプレイス保証を申請してください。当店から
も取引の経緯をアマゾンに報告し、今後の対応についてはアマゾンと相談して決
めさせていただきます。


なお「読書が好きです」(仮名)様は、他の出品者にも当店に対するのと同様の対応をされているようですね。複数の同業者より状況を聞いております。同業者の間では有名な存在になっていますので、その点お含み置き願います。

返事を送信後、すぐアマゾン出品者サポートに事実関係と当店の対処方針についてメールをしました。
「読書が好きです」(仮名)さんから、ほどなく返事が来ました。

社長様


その様におっしゃるのであればそれで結構です。
アマゾン規約に従ってご連絡した迄で、良い時は良いと申し上げていますし、瑕疵があればその旨ご連絡しているだけです。
ご連絡した内容は全頁チェックした結果です。
当方は別にキャンセルとか返品とかしたいわけではなく何かの参考になるかと思って、事実をありのままに申し上げているだけです。
私は学生の時に同じ本を購入して、所有していますが、それ(使用したものですが、殆ど真っ白です)と比較しても可也茶ヤケしていると思います。
まあ主観の相違かもしれませんが。


「読書が好きです」(仮名)より

私はここで下記の内容で2回目の返事を送信。

「読書が好きです」(仮名)様


ご返事ありがとうございます。
お言葉ですが、今回の件は、主観の相違ではなく、あなたが事実関係を偽って報告しているという点が問題なのです。
今回の件も含め、今までのあなたとの取引の経緯はアマゾンに報告させていただきました。今後はアマゾンからの指導をもとに、対応させていただきます。
また、今後は当店に注文なさらぬよう、お願い申し上げます。注文されても、アマゾンに報告の上、キャンセルさせていただきますので、ご承知おきください。

これに対する「読書が好きです」(仮名)さんの返事が連続して2通。

社長様


ご返信戴きありがとうございます。
アマゾン規約によれば、コンディションに付いては、「良い」とか「可」とかの他に、状態を出来るだけ正確に記載することになっていると思います。
私は、記載されていることは当然納得して注文しているわけですから問題がないとしても、記載されていないことは一言申し上げるのが、正しいと思い、全頁チェックした結果を申し上げているだけです。
意のあるところをご理解いただけず、誠に残念でございます。


「読書が好きです」(仮名) より

社長様


最後に一つだけ。
そちら様で写真を取ってあるとのことですので、取敢えず一例ですが。
1、書込に付いてはまずしょっぱなの目次みひらき6頁ー7頁の写真を照合してみて下さい。
2、付箋に付いては、118頁の写真を照合してみて下さい。
以上です。


「読書が好きです」(仮名) より
追伸 私は、出品案内に記載してある瑕疵に付いてクレームしたことはありません。

私の突っ込みに答えられるはずもなく、虚偽クレームの内容を繰り返すばかり。最後はご丁寧にありもしない具体例まであげる始末です。私はこれ以上、当人には何を言っても水掛け論になると判断し、返事は控えました。これ以降、当人からの連絡はありません。

そして翌日、「読書が好きです」(仮名)さんに売った本のアマゾンカタログを見たら、ある出品者が50000円で出品していました。状態は「良い」。状態コメントは次の通り「行為論の闘将、故・下村康正先生「総論」最後の演習書(絶版品切中の入手困難な稀覯書)!オビ・カヴァー付で保存状態も良好!線引き、書込み、サイン、蔵書印等一切なく、使用感もほとんどありません。きっと気持ち良く使って戴けると思います。出版から若干時間的経過があり、カヴァーや天地小口等の外装に多少の経年変化はございます。念のため3ランク落として超特価出品と致しました。もし宜しかったらどうぞご注文下さい。心からお待ち致しております」。なおこの出品者は、れんぽんさんのブログ「マケプる」2012年1月30日付「東日本大震災の大津波で、被害を受けた本が・・」で紹介されていた出品者と同一です。
やっぱりそう来たか!と。以前、「読書が好きです」(仮名)さんに売った本が、売った直後に何度か、このアカウントならびにもうひとつあるアカウント(出品者名「不愉快な古本屋さん」(仮名))に高値で出品されるということがあったからです。電脳せどりされたものが出品されることは別に構わないのですが、クレームが来て全額返金し、本は返送しなくてよいですよとしたら、その本が出品されていたということもありました。私は双方の出品アカウントから本を購入したことがあり、その時の発送元住所が、「読書が好きです」(仮名)さんご注文品の送付先と同じだったことを確認しています。「読書が好きです」(仮名)さんと、この2つの出品アカウントは同一人物とみて間違いないでしょう。なお私がこのアカウントから購入した際は、普通に丁寧な対応で、商品にも問題ありませんでした。

住所はI県M市にある出版社の社宅になっています。この2つの出品アカウントの出品物一覧を見ると、ほとんどが法律書。しかも直接買取でもしないと仕入れられないような珍しい本もかなりあります。その出版社も法律書をメインに出版しています。東京にも同名の出版社(こちらも法律書メイン)があるのですが、同社のサイトには「「○○社」(M市) 様とは営業、編集上、一切関係ございません。(マークが異なります)」との但し書きが記載されています。ここからは私の推測ですが、「読書が好きです」(仮名)さんはこの出版社にお勤めで、業務上法律関係に詳しく、法律系の研究者などに人脈があって、そのルートで仕入れをしているのでしょうか。そのかたわら、電脳せどりもしているようです。

「読書が好きです」(仮名)さんはメールでは「M・T」(女性名)を名乗っていた時期もあります。送り先は例の住所で、受取人名は「K・S」(女性名)。「知人のK・Sさんに本を贈っているのです」という趣旨のメールをいただいたこともありました。東日本大震災後は「知人のK・Sさんが被災し、本が津波で流されてしまい勉強に支障をきたしたので、私が本を贈っています」という内容に変化しました。黙って購入すればよいものを、何かにつけて不自然な理由づけをするのが特徴のようで、それは前出のれんぽんさんブログに紹介されている状態コメントにもあらわれています。この時は両方のアカウントで、そのようなアマゾンガイドラインに抵触するような内容の出品を大量におこない、あまりに目立ったためにブログやツイッター上でも紹介されることとなり、すぐに取り下げたようですが、似たようなことは前からやっていました。うちもそれに引っかかって値下げしすぎてしまい、買われてしまったという次第です。先日、市場で知人同業者に会ったときもその話題になり、彼もかなり困らされているようで、従業員に出品や発送の際、「読書が好きです」(仮名)さんと関連アカウントの出品には気をつけるようにと指示をだしたとのことです。

なおアマゾンには、いままでの事実経過を報告した上で、「読書が好きです」(仮名)さんとは正常な取引ができないため、再び注文が来た際、キャンセルしてもよいかどうかと、「読書が好きです」(仮名)さんと関連出品アカウントの状況を調査して、不正行為には厳正に対処し、できればアカウントの閉鎖をして欲しい旨、要請しました。早速アマゾンから返事が届きました。まずキャンセルについてはしてもよいけれど、現状では「出品者都合のキャンセル」になってしまうこと、状況の調査と対応については早速着手するが、どのような対処をしたかはプライバシーの問題があるので個別には答えられないこと、しかしながら出品者から購入者ブラックリストのような機能を設けて欲しいとの要望が多数来ているので、今後検討していくとの回答をいただきました。私としては、アマゾンもその点問題関心を持っていることを評価しつつ、引き続き悪意のある購入者出品者対策をすすめてもらうよう、重ねて要請しました。

今回の記事は、アマゾン上でごく少数ですが、悪意のある購入者や出品者の迷惑行為がなくなるために少しでも役立てばと思い、私の経験を公表するものです。もし似たような事例や被害を知っている方は情報をいただければ幸いです。あくまでも「読書が好きです」(仮名)さんに社会的制裁を与えることが目的ではありませんので、実名や具体的住所など個人情報をコメントすることはおやめください。また「読書が好きです」(仮名)さんと直接の取引関係にない第三者が、当人に直接連絡するなどして当人の平穏を乱すようなこともしないでください。念のため申し添えます。